特別公開講座「青木十良の世界」〜ウェブ版

 

  2006年11月24日(火)「青木十良チェロリサイタル」の翌々日26日(木)特別公開講座「91歳現役チェリスト青木十良の世界」

  (放送大学岩手学習センター主催)が岩手大学付属図書館4階放送大学大講義室にて開催されました。

  ヴァイオリン演奏が趣味の成田 浩 氏(岩手大学名誉教授)、チェロ演奏をされる 早坂啓造氏(岩手大学名誉教授)のお二人

  に鼎談のお相手をお引き受け戴き、まことに得がたい90分間となりましたが、その時の貴重なお話をフリーライターでご自身も

  ヴァイオリンを演奏なさる宮野ゆかりさんにその一部をウェブ上に再現していただきました。

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  一度は引退を考えたものの、「私は私の感じるバッハを演奏してみよう」・・・そう思ったのが72歳。

   「普通は70歳を超えると普通は伸びないと聞きますが、身を持って80歳を超えてもなお成長できるこ

   とに気づきました。ところが、なぜか年齢だけは勝手に進んでいくので、つきあっていけません(笑)。

   チェロはまだまだこれからですよ」と語る青木十良先生。


   鼎談の中で見せていただいた、そのすばらしい感性とユニークな一面から、一部をご紹介しましょう。

       (下写真、左から成田先生、早坂先生、青木先生)

 

   Q「譜面を見て、音符の配列からバッハの受難などその背景は、どう読み取るのですか?」

  青木: バッハの場合、原譜の中で最も信用できるのは、二度目の妻アンナ・マグダレーナが写譜したものだと思われます。

       私も最初はあまりわからなかったのですが、バッハがなぜスラーのつけ方を途中から変えているのか、8分音符一

       つとってもなぜそれを用いているのかなど、実際に演奏しているうちにバッハの意図するところが見えてきました。

       もちろん当時の弓の形と現在の弓の形は違うし、音の効果も微妙に違うので、そのあたりは、これから分析をもっと

       やっていきたいと思っています。

       チェロはバイオリンが完成してから60年遅れて完成しました。長さはバイオリンの2倍、厚さはきっちり3倍。私がチェ

       ロを弾くときはヒーヒーいっているんですが(笑)、若いアマチュアの方が楽々弾いているのを見るにつけ、おそらくバ

       ッハはビオラダガンバを弾きこなしていたのではないかと思われます。そして、チェロは奥さんにエチュードの目的で

       弾かせていたのではないでしょうかね。

       特にバッハの無伴奏6番は5弦のチェロが流行ったあたりなので、4弦で弾くと大変なところもあります。私がこの6

       番から挑戦しているのは、「最後の6番を弾いて死ぬ・・・」のではなく、6番の次は5番というように逆行していくこと

       で、スムーズにいけるのではないかと思ったからなのですよ。

  Q「先生は日本でブリテンのカルテット曲の初演をされましたが、テンポなどどうやって理解したのですか?」


  青木: テンポというのは不思議と曲を沢山弾いていると「だいたいこの程度」というのが読めるようになってくるもの

       です。カルテットでやっていくうち、あるときフッと「これだ!」ってわかる。

 

  Q「音楽を教えるにあたり、テクニックやメカニックはどう関係していますか?」

 
  青木: 私は現在でも、教えるにも、自分が学ぶのでも、それは様々で困っています(笑)。ただ、わかるのは日本と外国の

       教え方は違うということです。日本の基礎は、例えば16分音符があるなら、それらをきちんと全部鳴らして完成とさ

       せますが、私は、本当はこれは違うと思うのです。「音符の長さを全てきちんとそろえると、音楽はゼロになる」。音

       楽ってどうなっているんでしょうね・・・。そろえることは練習では必要なときもありますが、それを本番でもやると音楽

       が死んでしまう。音階の弾き方ひとつとっても、ドイツとフランスでは違いますよ。スピード感のある弾き方、フワッっ

       とした弾き方・・・さまざまで、お国柄なんでしょうか、本当に面白い。しかし、日本人はメトロノームに頼りすぎるし、

       機械を尊敬しすぎますよね。本当はメトロノームは使わないほうがいい。時間がずれててもそれでいいんですよ。実

       験をすると面白いのですが、例えば、サン=サーンスの白鳥を弾くとします。ピアノの弾く音は「湖」で、チェロは「白

       鳥」なわけですが、湖に浮かぶ白鳥が足でゆっくりと水をかき出して泳いでいるのに、きちきちとしたテンポで泳ぐ白

       鳥なんていなでしょう? 泳ぐテンポは白鳥のみぞ知る・・・速くなったり遅くなったり・・・そういうもんですよ!

 

  Q「子供たちにとって音楽は才能が関係するものなのでしょうか?アマチュアへのアドバイスを・・・」

 
  青木: 子供たちの場合、本質が大きく関係してきます。本質とは「心の問題」ですね。もともと音楽は楽譜という同じ材料を

       使っているわけで、人間としての悩みや苦しみが書き付けられた譜面をみて、そいういう感情を感じ取れるかどうか

       なのです。近代の子供の多くには、実際そのようなクラシックの根底を理解することは困難だと思います。音楽の天

       性はまた別にあると思いますが、小さいときから家庭・生活での苦しみを感じられないとね・・・。私は、10人兄弟の

       末っ子で、親とは一番縁は薄かったため、それを文字に求めていました。文字をたくさん読む人は、わりと深い部分

       を読み取ることができるようになるので、いろいろとためになると思いますよ。人間は苦しめば苦しむほど、浄化され

       たものをもとめるようになる。クラシック音楽をめざす音楽家は、苦しみ放題苦しんだほうがいい! そしてもっと高い

       ところで何かをつかんだらいいのではないでしょうか。それから、複数の先生につくとわかりますが、先生によっては

       まったく正反対のことをいう人も多いですよね。沢山の先生について、そこから方法やアイデアをチョイスするのは本

       人。精神的に合う先生を選べるかどうかもひとつです。生活背景や精神的に辛い思いをしてきた人は、ある時、共鳴

       する先生と出会えるときがあるはずです。あまり豊かな生活をしていると、どの先生も一緒に聞こえてくるものですよ!(笑)

                                      ・

 

        ※ 鼎談当日のお話、わたしがご自宅でお聴きした貴重なお話など、まだたくさんありますので、おりをみてUPさせていただきます。

 

         「 静岡県の掛川に響きの良い場所があるらしい、との報告を受けたので、今度、見に行こうかと思っているところです、

         もしそこがよければ、4番の録音をと。」

        ※ このウェブ公開にあたり、ご自身もヴァイオリンを演奏されるフリーライターの宮野ゆかりさんにご協力いただきました。

 

        =宮野ゆかりさんのプロフィール=

             出版社勤務を経て、フリーライターとして県内外にて活動中。また、プライベートにおいては、3歳からピアノ、その後、

             12歳でヴァイオリンに転向。以来、stringの音色に魅せられアマチュアオーケストラやアンサンブル、カルテットなどに

             参加。現在は、盛岡に拠点を置きNSQ(Narita string quartette)、シンフォニエッタ盛岡にて活動中。

        

          

 



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